認知症ケアにおいて基礎となる理念や考え方
パーソン・センタード・ケア
認知症の人にケアを提供していくためには、認知症ケアの基本的な理念や考え方を理解しておくことが、非常に重要となります。
デイサービス昭和館のスタッフは、近年の認知症ケアの基礎となる考え方であるパーソン・センタード・ケアを学び実践しています。
パーソン・センタード・ケアとは、その人を中心としたケアのことをいいます。この考え方は、イギリスの心理学者 Tom Kitwood(トム・キットウッド)によって示されたものです。これまでは、認知症という疾病や症状を中心にケアを組み立ててきましたが、パーソン・センタード・ケアの立場は、本人の生き方や生活に重点をおく考え方なのです。ケアは私たち介護者が選択するのではなく、利用者本人を中心にして選択するという考え方です。本人のこれまでの生活史、ニーズ、その人らしさをケアの中心にして、本人の内的体験を聴くことにケアの重点をおく考え方といえるでしょう。
認知症の人の捉え方
これまでの認知症ケアは、認知症の病気の部分を中心に捉え、診断と様々な症状にどう対応するかを考えてきました。つまり、認知症という病気に視点をおいて、人を理解するという視点が足りないという問題がありました。
しかし、パーソン・センタード・ケアでは、病気の理解は大切であっても、病気を抱えた一人の人として理解するという視点を持つことの重要性が指摘されています。
認知症介護基礎研修標準テキスト
参考文献
認知症介護研究・研修センター(2015)『認知症介護基礎研修標準テキスト』ワールドプランニング.
パーソン・センタード・ケアを実践するために
パーソンフッド
1990年前後にTom Kitwood(トム・キットウッド:1937-1998)によってパーソン・センタード・ケアの概念が提唱された当時、認知症の人たちの症状は、脳自体の障害によるどうしようもないものであり、上手に管理するか、身体的な介護をするしかないと思われていました。
しかし、彼は、認知症の進行と本人がよい状態(well-being)を経験することとは、連動しないと考え、身体的な介護だけでなく、心理的なニーズを満たし、パーソンフッドを高めることが、目指すべきケアであると説きました。
トム・キットウッドによって提唱された、パーソン・センタード・ケアの核となる考えがパーソンフッドです。彼は、認知症をもつ人々にとって、「くつろぎ・やすらぎ、自分が自分であること、愛着・結びつき、たずさわること、共にあること」の5つの心理的ニーズは非常に重要であると考えました。
このニーズは、最後まで変わることはなく、たとえ進行しても、これらが満たされれば、これらを包含する愛情のニーズが満たされ、よりよい状態となりうると考えました。
そして、これらの包括的な概念をパーソンフッド(一人の人として、周囲に受け入れられ、尊重されること)と表現したのです。心理的ニーズが満たされていないケア環境では、行動障害、苦痛、無気力が蔓延し、適切なサポートによって心理的ニーズが満たされているケア環境では、お互いに信頼しあう人間関係が見られ、よい状態が維持されます。これらを、パーソンフッドが尊重されていない環境、パーソンフッドが尊重されている環境などと表現します。
参考文献
認知症介護研究・大府研修センター(2015)『認知症ケアマッピング(DCM)って何?』
認知症介護研究・研修大府センター
愛知県大府市半月町三丁目294番地
電話:0562-44-5551
2019年度 パーソン・センタード・ケア研修
2019年度 大阪市パーソン・センタード・ケア研修
大阪市認知症介護指導者によるパーソン・センタード・ケア研修
認知症介護従事者が、認知症ケアの基本的な理念や考え方を理解し、認知症の人に適切なケアを提供していくことができるように、認知症介護人材の育成を実践してまいります。
大阪市福祉局高齢者施策部高齢福祉課認知症施策グループ
大阪市北区中之島1丁目3番20号(大阪市役所2階)
電話:06-6208-8051
「認知症を知り地域をつくる10ヵ年」の構想
認知症を知り地域をつくるキャンペーン
2004年12月に「痴呆」の呼び名が「認知症」に改まり、つづく2005年度が「認知症を知る1年」と位置づけられました。単なる呼称変更にとどまらず、今後多くの人々に認知症が正しく理解され、また認知症の方が安心して暮らせる町がつくられていくよう、その第一歩として、普及啓発のためのキャンペーンが開始されました。
厚生労働省の「認知症を知り 地域をつくる10ヵ年」の構想のもと、認知症の方とそのご家族を地域の中で支える「地域づくり」をめざしています。民間の有識者や団体を中心とした「認知症になっても安心して暮らせる町づくり100人会議」の支援をうけ、平成17年度から全国で展開されています。
みんなで認知症の人とその家族を支え、見守り、ともに生きる地域を築いていく運動を推進しています。
認知症になっても安心して暮らせる町づくり100人会議宣言
- わたしたちは、認知症を自分のこととしてとらえ、学びます。
- わたしたちは、認知症の人の不安や混乱した気持ちを理解するよう努めます。
- わたしたちは、認知症の人が自由に町に出かけられるよう、応援します。
- わたしたちは、認知症の人や家族が笑顔で暮らしていけるよう、いっしょに考えます。
- わたしたちは、市民や企業人としてできることを行い、安心して暮らせる町づくりをめざします。
認知症サポーター100万人キャラバン
私たちデイサービス昭和館のスタッフは、認知症に対して正しく理解し、偏見をもちません。
認知症の人やそのご家族を温かい目で見守ります。
地域でできることを探し、相互扶助・協力・連携のネットワークづくりに寄与します。
デイサービス昭和館のスタッフは大阪市キャラバン・メイトとして登録し、活動に参加しています。
認知症サポーターおよびキャラバン・メイトに関するお問い合わせ
大阪市社会福祉協議会 地域福祉課(大阪市キャラバン・メイト事務局)
電話:06-6765-7273
認知症サポーターの養成と活動の支援
認知症施策推進総合戦略~認知症高齢者等にやさしい地域づくりに向けて~(新オレンジプラン)では、認知症への理解を深めるための普及・啓発を推進しています。
認知症サポーターの養成と活動の支援について、認知症サポーターを量的に養成するだけでなく、活動の任意性を維持しながら、認知症サポーターが様々な場面で活躍してもらうことに重点を置いています。
デイサービス昭和館は、事業所の休業日に施設の一部を提供し、社会貢献の一環として、認知症カフェ(オレンジカフェ昭和館)を開催しています。
オレンジカフェ昭和館では、ボランティア活動としてお手伝いしてくださる方を受け入れしています。
認知症サポーター養成講座を修了して、認知症サポーターとして活躍の場をお探しの方はお気軽にお問い合わせください。