回想法
回想法とは
回想法とは、アメリカの精神科医、ロバート・バトラー氏が提唱した心理療法のことをいいます。
認知症を患うと記憶障害が進行して、つい先ほどのことを忘れてしまうものですが、古い記憶は結構しっかりと残っていて、昔の話なら次から次へと出てくるものです。
昔の懐かしい思い出を語り合ったり、誰かに話したりすることで脳が刺激され、精神状態を安定させる効果が期待できます。長く続けることで認知機能が改善することも明らかになり、日本でも認知症患者のリハビリテーションに利用されるようになりました。
デイサービス昭和館における回想法
デイサービス昭和館は、昭和時代の木造一戸建て民家を改修したレトロで小規模な地域密着型通所介護施設ですが、建物の中も昭和の雰囲気が溢れています。
和室の畳、襖、障子、欄間、掘りごたつ、簾など、レトロな空間を演出しています。
食堂の壁には発条仕掛けの古い振り子時計があり、毎正時に時打ちの音が時刻の数だけ「ボーン」と、鳴り響きます。
うっかり発条を巻くのを忘れると振り子も時計の針も止まってしまいます。
時刻を合わせても少し進んだり少し遅れたり、当時物の古い時計は面倒だと思うこともありますが、時計前面のガラス扉を開けて発条を巻き上げる音も耳に心地良いです。
時打ちの音が「ボーン」と鳴り響く瞬間は、テレビの音声が少し聞きづらくなったりするのですが、部屋中に響き渡る時打ちの音色には、とても懐かしさを感じてしまいます。
回想法には、昔の写真、印刷物、おもちゃなど、様々な小道具を用いますが、デイルームを部屋ごと昭和時代にタイムスリップさせるかのような内装を、楽しみながら手作りしています。
新しくて立派な設備の施設には敵わないところがありますが、一歩中へ入るだけで古き良き時代に思いを馳せることができる居場所は、デイサービス昭和館ならではの良さだと自負しています。
認知症高齢者への回想法
参加する認知症高齢者の正確な情報を知るために事前アセスメントを行い、ニーズに合わせた回想法プログラム計画を立案し、参加者にとって無理のないスケジュール(回数、期間)で実施します。
認知症の重症度が中等度まで進行している認知症高齢者が回想法プログラムに参加する場合は、認知機能の低下の度合いによって、グループ回想法への参加が困難なこともあります。
困難と判断した時は無理をせず、先ずは、回想法リーダーと1対1の個人回想法から行い、昔のことを回想することから始めます。回想法リーダーが「きっかけ」を作ることで、参加者は昔の楽しかった出来事を思い出し、回想法リーダーに語ります。
回想法リーダーは傾聴し、参加者の気持ちに寄り添い、情緒の安定を図っていくのです。
個人回想法が問題なく実施できる状態になれば、参加者を1人増やし、回想法リーダーと参加者2人の3人グループによるグループ回想法を試みます。この時点で加わっていただく参加者が同じ曜日の利用者同士で顔見知りであるとか、既に会話を交わす関係であれば、お互いに緊張なくスムースに進行できる可能性が高まります。
他の参加者が増えたことで不安がある場合は、参加者の間にコリーダーを配置する隊形とします。
グループ回想法としては最少人数になりますが、参加者同士の交流を図ることが可能になります。
はじめの回想法プログラム計画が個人回想法であっても、認知症高齢者の心の安定を図りながら、段階を経ることで、グループ回想法への参加が可能になります。グループ回想法に参加して、参加者同士でコミュニケーションを図ることができるようになれば、ケアプランにある「他者との交流」という目標に対し、一定の成果をあげることにつながっていくのです。
デイサービス昭和館では、回想法リーダーを管理者が、コリーダーを介護職員が務めています。
回想法研修
認知症の方への回想法研修
回想法に関する研修の受講状況 | |
---|---|
認知症の方への回想法研修 | 回想法専門研修受講修了者を対象に 実践の様子を映像で見ながらリーダー技法について深めます。 回想法基礎研修受講修了者を対象に 企画、立案からリーダー技法等を学びます。 回想法の意義や実践を基礎から学びます。 |
デイサービス昭和館の管理者は、認知症の方への回想法ステップアップ研修を修了しています。
回想レクリエーション
そろばん
デイサービス昭和館では、ご利用者様のご希望により算盤を使った個別レクを実施しています。
読み上げ算で読み手が読み上げる問題を正確に聞き取ることや、そろばんの珠を指先で上下に移動させることには、脳を活性化させるトレーニングになります。
珠算は、脳トレーニングとして有効なレクリエーションですが、算盤を用いたレクリエーションは回想につながるときがあります。 子どもの頃から算盤に馴染みのある人が算盤を手に取り珠を弾くことで、昔の懐かしい思い出を語り始めるきっかけとなることもあるのです。
デイサービス昭和館には、日本珠算連盟上位資格を取得・保有している職員が勤務しています。
NHK アーカイブス 回想法ライブラリーDVD
むかしの暮らし・むかしの日本各地
なつかしい物や映像を見て思い出を語り合う回想法は、脳を活性化し情緒を安定させ、長く続けることで認知症の進行予防やうつ状態の改善につながる可能性があるといわれています。そして、高齢者の認知症予防や認知症患者の心理療法、リハビリテーションに活用されています。
NHKでは、保存している映像を再活用して、高齢者のサロンやデイサービス、施設で手軽に回想法を行えるように、映像、利用方法動画、実践例などをホームページで公開しています。
NHK アーカイブス 回想法ライブラリー
「認知症を知り地域をつくる10ヵ年」の構想
認知症を知り地域をつくるキャンペーン
2004年12月に「痴呆」の呼び名が「認知症」に改まり、つづく2005年度が「認知症を知る1年」と位置づけられました。単なる呼称変更にとどまらず、今後多くの人々に認知症が正しく理解され、また認知症の方が安心して暮らせる町がつくられていくよう、その第一歩として、普及啓発のためのキャンペーンが開始されました。
厚生労働省の「認知症を知り 地域をつくる10ヵ年」の構想のもと、認知症の方とそのご家族を地域の中で支える「地域づくり」をめざしています。民間の有識者や団体を中心とした「認知症になっても安心して暮らせる町づくり100人会議」の支援をうけ、平成17年度から全国で展開されています。
みんなで認知症の人とその家族を支え、見守り、ともに生きる地域を築いていく運動を推進しています。
認知症になっても安心して暮らせる町づくり100人会議宣言
- わたしたちは、認知症を自分のこととしてとらえ、学びます。
- わたしたちは、認知症の人の不安や混乱した気持ちを理解するよう努めます。
- わたしたちは、認知症の人が自由に町に出かけられるよう、応援します。
- わたしたちは、認知症の人や家族が笑顔で暮らしていけるよう、いっしょに考えます。
- わたしたちは、市民や企業人としてできることを行い、安心して暮らせる町づくりをめざします。
認知症サポーター100万人キャラバン
私たちデイサービス昭和館のスタッフは、認知症に対して正しく理解し、偏見をもちません。
認知症の人やそのご家族を温かい目で見守ります。
地域でできることを探し、相互扶助・協力・連携のネットワークづくりに寄与します。
デイサービス昭和館のスタッフは大阪市キャラバン・メイトとして登録し、活動に参加しています。
認知症サポーターおよびキャラバン・メイトに関するお問い合わせ
大阪市社会福祉協議会 地域福祉課(大阪市キャラバン・メイト事務局)
電話:06-6765-7273
認知症サポーターの養成と活動の支援
認知症施策推進総合戦略~認知症高齢者等にやさしい地域づくりに向けて~(新オレンジプラン)では、認知症への理解を深めるための普及・啓発を推進しています。
認知症サポーターの養成と活動の支援について、認知症サポーターを量的に養成するだけでなく、活動の任意性を維持しながら、認知症サポーターが様々な場面で活躍してもらうことに重点を置いています。
デイサービス昭和館は、事業所の休業日に施設の一部を提供し、社会貢献の一環として、認知症カフェ(オレンジカフェ昭和館)を開催しています。
オレンジカフェ昭和館では、ボランティア活動としてお手伝いしてくださる方を受け入れしています。
認知症サポーター養成講座を修了して、認知症サポーターとして活躍の場をお探しの方はお気軽にお問い合わせください。